ギリシア文化
*まずはじめに古代ギリシアの哲学者の名前をおぼえていきます。地名は上の地図を参考にしてください。
イオニア学派
*小アジア(アナトリア半島)にあるイオニア人の植民市、特にミレトスを中心として、万物の根源(アルケー)は何か?ということを考える自然哲学が始まりました。彼らをイオニア学派または、ミレトス学派と言います。
・ターレス
【前7世紀半ば〜前6世紀前半】
①『ターレス』→『(水が)垂ーれす』で『万物の根源は水である』と言った人。これはもうお約束です。
② 後に、アリストテレスによって『哲学の祖』と言われました。
③ 中学で習う直径に対する円周角は直角である、という定理はターレスが見つけたので『ターレスの定理』と言われます。
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・アナクシマンドロス
【前7世紀末〜前6世紀半ば】
①『アナク千万遠ロス』とイメージして下さい。『千万遠(せんまんどお)』→『千万光年も離れた遠く』と言えば、ほとんど無限に遠いところのイメージです。ということで、アナクシマンドロスは、万物の根源は『無限なもの』限りのないものとしました。
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・アナクシメネス
【前6世紀】
① アナは『穴』で空間です。『穴空占めネス』で空間を占めているもの、つまり『空気』です。アナクシメネスは、万物の根源は『空気』であると考えました。
② アナクシマンドロスの弟子です。ターレス・アナクシマンドロス・アナクシメネスの三人がイオニア学派の代表で、ミレトス三哲人です。
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・ピタゴラス
【前6世紀前半〜前5世紀初め】
① 計算の答えを『ピタッ』と当てる数学者。ピタゴラスが数学者ということは、ピタゴラスの定理(三平方の定理)の名前から知っている人も多いでしょう。ピタゴラスは万物の根源は『数』であると考えました。
② 科学の発達した現代の人には腑に落ちるところもあるでしょうが、実際には、ピタゴラスはそれぞれの数には、男は3で、女は2であり、5は結婚を意味するといった独自の意味があると考える神秘主義者でした。また、輪廻転生を説きました。
③ ミレトスに近いサモス島出身で『サモスの賢人』と言われます。イタリアで活動し、ピタゴラス教団という宗教教団を作りました。
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・ヘラクレイトス
【前6世紀半ば〜前5世紀前半】
①『火(ひ)が暗(くれ)いとす』→もっと『火』をくれ。ヘラクレイトスは万物の根源は『火』だとしました。
②『万物は流転する』と言ったことでも有名です。万物はその背後にある原理に従って次々に変化し移り変わっている。その原理は『火』だ、と考えた訳です。
① ミレトスの北にあるエペソス(エフェソス)の人です。
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・エンペドクレス
【5世紀】
[イタリアのシチリア島南部出身]
① この人は四元素説を立てた人です。この世は火・水・空気・土という4つのもとからできているとした多元論者です。
② ターレス、アナクシメネス、ヘラクレイトスなどの主張したアルケーをまる(円)っと取り入れて『ぺとぺと』と貼り合わせてできた考えなので『円ぺとクレス』は四元素説です。異なる考えを取り込んで丸く収めた感じです。
③ 四元素説は、アリストテレスに受け継がれ、中世ヨーロッパで支持されていました。
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・デモクリトス
【前5世紀後半〜前4世紀前半】
① 物を小さく分けていくともうこれ以上分けられない『原子(アトム)』に行き着く、とデモクリトスは考えました。これは、近代の『原子論』につながっていきます。
② 『デモ栗トス』と覚えます。いが栗を開けるとたくさんの栗が入っていますね。『もうこれ以上分けられない栗』です。これを『原子(アトム)』だとイメージしましょう。デモクリトスは『原子論』です。
③ ギリシア北東部、マケドニアの東にあるトラキア地方の人です。
*アルケーの哲学者は以上(7名)です。
(科学)
・ヒッポクラテス
【前5世紀後半〜前4世紀前半】
① 医学の父と言われる人です。もうこれは言うまでもないですが『ピーポーピーポー』は救急車のサイレンの音で『ピーポークラテス』は医学の父です。
② 小アジアのミレトスの南の方にあるコス島出身の人です。
ソフィスト
*主にアテネを中心に活動した、金銭をとって徳を教えるとされた弁論家・教育家。口の上手い詭弁家というイメージで語られることが多いです。ここでは代表として一人だけ扱います。
・プロタゴラス
【前5世紀】
① この人はギリシアのソフィストの代表で、ソフィストと言えば、賢いおしゃべりのプロです。つまり『プロ多語ラス』と覚えましょう。
② 個々の人間がどう見るかによって、真理は百人百様で、真理は見る人間の数だけあるのさ、ということで『人間は万物の尺度』と説きました。
こうした見方は、相対主義と言いますが、これはこれで現代に通じる重要な考え方です。
③ この人は、生まれはマケドニアの東にあるトラキア地方です。
アテネ哲学
*イオニア地方中心に発達した哲学をアテネが引き継ぐ形でアテネの哲学が発達します。ただし、イオニアの自然哲学とは趣きがかなり違っています。ソフィストの批判から出てきたもので、誰が見ても正しい客観的な真理を信じ、その追求を行ったことに特徴があります。
・ソクラテス
【前5世紀前半〜前4世紀初め】
① タイマンで相手と問答をくり返すことで、相手が本当に何かを知っているのではなく、知っているつもりでいるだけなのだということを明らかにしていくという『問答法』を実践した哲学者です。これを『無知の知』といいます。
② 知者として振舞っている人々に泡を吹かせ『反っくり』返らせるので『ソクラテス』です。
・プラトン
【前5世紀後半〜前4世紀半ば】
① ソクラテスの影響を受け、ソクラテスを主人公とする多くの『対話篇』を書きました。私たちは何も『本当のこと(真理)』を知らないというソクラテスの追求は『本当のこと(真理)』がどこかに存在していることを前提としています。
プラトンはそれを、人間の背後にある理想の世界である『イデア』に求めた哲学者です。
② プラトンは、プラトニックラブ(純粋な精神的恋愛)という言葉の語源です。想念の世界でなくては、完全な理想は存在しえないというわけです。
・アリストテレス
【前4世紀】
① 『アリス』が付く人は、アリスの後の部分に着目して覚えます。『アリスト輝レス』『輝(テル)』は頭が冴える、ということで哲学者です。
② プラトンの弟子の哲学者で『学問の父』と呼ばれます。いわゆる『○○学』というのは、この人が始めたものです。
③ アレクサンドロス3世(大王)の家庭教師で、遠征中も、君主のあり方を記した書物を送り、アレクサンドロスも、アリストテレスにその土地の珍しい植物などを研究のために送っています。
その他の文化
・ヘロドトス
【前5世紀】
① 『経ろドトス』が単純でいいですね。世の中は色んな時代を『経て』ドンドン過ぎ去り、移り変わっていくので『経ろドトス』で歴史家です。
ヘロドトスの歴史は物語風の歴史でしたが、ヘロドトスは歴史の父と言われます。
② 主な著作は『ペルシア戦争史』と『歴史』です。
・トゥキディデス
【前5世紀後半】
① トゥキディデスも歴史家ですが、ヘロドトスのような物語風の歴史ではなく、客観的な歴史の記述に特徴があり、科学的歴史の父などと言われます。ヘロドトスより頭一つ『突き出し』た歴史家なので『突キ出ィデス』です。
② この様にトゥキディデスはヘロドトスとセットで覚えましょう。ギリシア人の大きな戦争の第一がペルシア戦争なら、次はペロポネソス戦争です。
トゥキディデスの主著は『ペロポネソス戦争史』と『歴史』です。
・ホメロス
【前9世紀】
① 昔の英雄の活躍を歌い『ほめ』称えた詩人が『ホメロス』です。
② 英雄の物語を韻を踏んで歌った『叙事詩』を書いた伝説の詩人です。
③『イーリアス』と『オデュッセイア』という二つの作品で有名です。
・ヘシオドス
【前8世紀】
① 苦労することを『骨を折る』と言いますが、骨を『へし折って』労働することの素晴らしさを教訓詩に歌ったのがヘシオドスの『労働と日々』です。つまり、ヘシオドスも詩人です。
② この人は、ギリシアの神々をまとめた『神統記』も書きました。今日よく知られているギリシア神話の幾つかの内容は、この人が自分の好みでアレンジしたものと言われています。
・サッフォー
【前6世紀前半】
①『サッ4(フォー)』で4(シ)なので詩人です。で、サッちゃんは、ギリシアで唯一の女流詩人です。
② 女流詩人のイメージどおりと言ってはあれですが『恋愛』を詩に歌っています。
・アナクレオン
【前6世紀】
① 酒と女(恋人)が大好きで、それらを讃える詩を作った荒くれ男、じゃなくて『アナクレ』男が『アナクレオン』です。ここまで4人の詩人が出ました。
・ピンダロス
【前6世紀末〜前5世紀前半】
① オリンピア競技の優勝者を讃える合唱詩を作りました。
② で、ひと競技の優勝者は一体、何人いるの?って、そりゃ決まってるじゃないか『ピン(一人)だろ。』ということで、ピンダロスは、オリンピアのピンの『優勝者』を讃える合唱詩の作者です。
・アイスキュロス
【前6世紀末〜前5世紀前半】
① 『アイスキュリーム』が『ロス(無くなった)』ということで、『アイスキュ・ロス』→嘆き悲しむ→悲劇→悲劇作家、ということです。哀スキュロスでもいいですね。
② 次のソフォクレス・エウリピデスと合わせて古代ギリシアの三大悲劇作家と言われます。
③ 悲劇『アガメムノン』が出てきたら『ア』が付くアイスキュロスの作品だと思ってください。
・ソフォクレス
【前5世紀】
① 『しょぼくれ』た顔をした『ソフォクレス』で→嘆き悲しむ→悲劇→悲劇作家です。
② 悲劇『オイディプス王』が出てきたら唯一小さい『オ』が付くので『ソフォクレス』です。
・エウリピデス
【前5世紀】
① これも『エウリ悲デス』または『エウリ酷ぇっす』で悲劇作家です。
② 名前に『リ』と『デ』が入っています。つなげると『リディア』です。ということで、この人の作品はリディア、と見せかけて『メディア』です。
・アリストファネス
【前5世紀〜前4世紀初め】
①『アリス』が付く人は、アリスの後の部分に着目して覚えます。『ファファファ(ハハハ)』→『笑い声』ということで喜劇作家です。
または『ファネ(羽根)』のようにフワフワ浮いてウキウキする喜劇作家です。
② 『女の平和』『女の議会』の様な『女の〜』系の作品が代表作です。社会の風刺を行いました。
③ ソクラテスと同じ時代の人で、作品の中に登場させて馬鹿にしています。
ヘレニズム文化
【ちょっと解説】
*ヘレニズム時代というのは簡単に言えば、アレクサンドロス大王の遠征の後、アンティゴノス朝マケドニア、セレウコス朝シリア、プトレマイオス朝エジプトなど、ギリシア世界が広大な領域に拡大した時代です。
*『ヘレニズム』とは『ヘレネス(ギリシア人の自称)』の文化ということです。この時代にヘレニズム文化が、エジプトや中央アジアにまで広まり、地方の文化と混ざり合いました。
*ポリスのまとまりが崩壊して『コスモポリタニズム(世界市民主義)』となりました。
このことで、かえって『個人』は、拠り所を失い、外の世界でなく自分の『心』の内側に平安を求める傾向が高まった、というのが、この時代の哲学の特徴です。
*哲学の代表は『ストア派(禁欲主義)』と『エピクロス派(快楽主義)』です。
・ゼノン
【前4世紀後半〜前3世紀前半】
① 禁欲主義(ストア派)の代表です。『絶対ノンノン!』で『ゼノン』と覚えましょう。やっちゃダメ!と禁止するイメージです。
② 感情や欲望を理性で抑制することによって、心の平静が得られ、真の幸福が得られるという考えです。
・エピクロス
【前4世紀後半〜前3世紀前半】
① 気分が『えーピクロス』ということで、快楽主義の代表です。
② 快楽主義と言っても、エピクロスは精神的な快楽でなくては、真の幸福は得られないと考え、真の幸福は心の平静にあると考えました。
③ デモクリトスの唯物論の影響を受けており、死後の世界を否定していました。
その他の文化
・アリスタルコス
【前3世紀前半】
① この時代にあって、地球の自転と公転説(太陽中心説)を説いた人です。恒星までの距離も計算しました。すごいですね。
②『アリス』が付く人は、アリスの後の部分に着目して覚えます。『樽(たる)』はコロコロと転がる→自転・公転説ということです。覚え方のバカさが際立ちます。
③ 小アジア南西部にあるサモス島生まれです。
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・エラトステネス
【前3世紀末】
①『えら遠す』→『えらい遠いっすね〜』と言いながら地球の全周を測って回った人と覚えましょう。
実際には、計算で出したんですが、イメージです。
② 地球の全周はピッタリ4万キロです。すごいですね!もちろん、地球の全周をもとにしてkmを決めたからです。
③ 『エラトステネスのふるい』という素数の見つけ方も有名です。
④ エジプトのアレクサンドリアにあるムセイオン(学園)の館長でした。
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・ヒッパルコス
【前2世紀】
① 天動説、古代天文学を完成させた人です。天動説は、ヨーロッパでは中世の間ずっと信じられることになるので、後の時代まで、天動説が引きずられるきっかけになったということで『天動説を後々の時代まで引っ張るコス』と覚えましょう。
・アルキメデス
【前3世紀】
① 有名な数学者なので覚え方は要らないかもしれませんが、円周率πを、r(半径)を決めて出した人ということで『アルキメデス』→『r(アール)決め出す』→円周率の計算、球体の体積を求めた人。ということで覚えるとよいでしょう。
② 他にも、比重の計算や、てこの原理など多くの発見をしました。
③ シチリア島のシラクサ生まれで、当時はイタリアのギリシア系都市が、共和政ローマに敗れ、呑み込まれていく時代でした。アルキメデスは、てこの原理など、科学的な知識を応用した兵器でローマ軍を苦しめたと言われます。
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・エウクレイデス
【前3世紀後半】
①『ユークリッド』として知られている数学者でギリシアの『幾何学』をまとめた人です。中学・高校と図形の証明をやりますが、あれが幾何学です。『ゆーっくりと』図形の問題に取り組む『ユークリッド』です。
② 著書『幾何学原論』は、古代ギリシアの平面幾何学の集大成で、聖書と並ぶ時代をこえたベストセラーと言われます。
③ プトレマイオス1世時代、エジプトのアレクサンドリアの人です。
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