*YouTube用教材はこちらです。
置き字
*漢文の訓読で原文にあるのに読まない字を「置き字」とか「捨て字」といいます。捨て字は可哀そうなので「置き字」にしておきます。
*前置詞・終尾詞・接続詞などの一部に「置き字」が見られます。前置詞・終尾詞・接続詞のすべてが「置き字」という訳ではありません。
前置詞「於・于・乎」
・置き字に使う前置詞として覚えておくべき字は『於(オ)・于(ウ)・乎(オ)』の3つです。
「かたっぽの屋根に干して呼ぶ」と覚えます。
①「かた」は『方』「屋根」は『人』「に」は『二』「干して」が『于』「呼ぶ」は『乎』です。
②「干す」と「于」は違う文字ですが、似ているのでこう覚えます。「乎」は「呼ぶ」の右側ですので「呼ぶ」から引き出してしまいます。
③「於・于・乎」はなじみのない漢字ですが、「かたっぽの屋根に干して呼ぶ」のフレーズ一つで覚えられます。
終尾詞「矣・焉」
置き字の終尾詞として覚える字は2つ、『矣(イ)・焉(エン)』です。
「ムリ矢りせい下取り」と覚えます。
①「ムリ」で「ム」「矢り」で「矢」つまり「矣」となります。
②「せい」は「正」「下取り」は「下鳥」という意味で「鳥」という字の「下」の部分だけ取って組み合わせると「焉」ができます。
*これらの終尾詞は文末において断定・確認の意味をもちます。
接続詞「而」
置き字の接続詞として覚える字は1つ、『而(ジ)』だけです。
で、覚え方としても「ジ」としています。いわゆる「く○じい」のイメージです。
*字は読みませんが、接続詞として順接(and)・逆接(but)両方の意味を表します。
受身形
・「る・らル」と訓じる字…「被・見・所・為」
受身形をつくる文字として覚える字は4つあります。『被・見・所・為』です。
① それぞれの字の間にレ点を入れて「なすところを見らる」と下から反って読みます。
② 実際には『被・見・所・為』はすべて「る / らル」と読む字です。「被」は「被害」の「被」で受け身のイメージが強いのでこれだけ「らル」と読ませました。
③ 但し「なすところを見らる」で覚えた後は、もう意味は分かっているので、直接音読みで「ヒケンショイ」と読んで書けるようにすることを勧めています。
*使い方の基本は上の「被見(見らル)」の様に動詞の前につけるだけで受け身になります。
*詳しくは別ページを設けて説明します。
使役形
・「しム」と訓じる字…「使・令・俾・教・遣」
使役形をつくる基本の文字として覚える字は5つあります。『使・令・俾・教・遣』です。
「卑しい人に使令して教えて遣わす」と覚えます。
①「卑しい人」は「卑」に「人(にんべん)」で「俾」となります。
②「しれい」は本当は「指令」と書きますが初めから「使令」と書いて覚えます。但し現代文で「指令」を漢字で書けと問われて「使令」と書いてしまったとしても、当方では関知しませんのでそのつもりで。
③ 一応訓読っぽくすると上の様になります。この形で覚えたらこれらも受け身形のときと同様に「シレイヒキョウケン」と音読みにして、覚えてしまうのがお勧めです。
*使い方の基本は、英語の使役動詞makeの使い方とほぼ同じなので一緒に覚えるといいですね。
*英語では『~させる』対象となる人をmakeと動詞の原型ではさんで『make one run (人)を走らせる』の様に文を作りますが、漢文でも、例えば『使』を使って『使 人 走 』とはさんで『人をして走らしむ』となります。
・使役を導く字…「召・命・説・勧」
使役形をつくる基本の文字以外に、使役形を導く文字として4つ覚えます。『召・命・説・勧』です。これらは「証明して説き進める」と覚えます。
① まず「証明して説き進める」というフレーズをしっかり覚えます。絵で描いているように数学の図形の証明などのイメージです。
② 次にこれらを「召命して説き勧める」という風に漢字を入れ替えて書けるようにします。
③ これまでも幾つかありましたが、今回は覚えるフレーズと引き出す文字がすべて違っています。実は初めは「召命して説き勧める」のままで覚えることにしていました。「召命」とは神様に導かれて使命を与えられることで、それによって「(教えを)説き(正しい道を)勧める」というのは例えば「ザビエル」みたいなイメージです。ただ、YouTubeなんかでは分かりづらいので数学の「証明」にしました。
④これらの字も慣れたら「ショウメイセッカン」と音読みで覚えて引き出せると便利です。使役形でまとめて「シレイヒキョウケン・ショウメイセッカン」と覚えるようにします。
*使い方は基本的には『使・令・俾・教・遣』と同じ語順をとりますが『召・命・説・勧』はそれぞれ『召して・命じて・説きて・勧めて』と読むので訓読が独特になります。
仮定形
・「若・如・苟・縦・雖・微・使」
仮定形をつくる文字として7つ覚えます。『若・如・苟・縦・雖・微・使』です。
「もし若いおなごイヤだといえども人なかりせばつかえ」と覚えます。
*「もし若い女性は苦手だとかいう意識があったとしても人手が足りないなら贅沢は言えんだろ!採用しなさい」と言っています。
①「もし」は2つあります。「若」と「如」です。
「若いおなご」の「若い」から「若」「おなご→女(オナ)口(コウ)」から「如」が引き出せます。それぞれ「若シ~バ(トモ)」と「如シ~バ(トモ)」と読みます。
②「苟」は『いやしクモ~バ』「縦」は『たとヒ~トモ』と読みます。「苟・縦」で『いや・たと』になります。頭出し方式になっています。
③「雖」は『~トいえどモ』「微」は『~なカリセバ』と読みます。「雖・微」で『といえども(人)なかりせば』になります。『人』の部分に対応する漢字はありません。
④ 最後の「つかえ」は「使」で導くのは簡単ですが、『~ヲシテ~しメバ』という訓読を覚えなくてはいけません。使役の仮定形となります。
⑤ 『若・如・苟・縦・雖・微・使』の列を見て「(もし)若いおなごイヤだといえども(人)なかりせばつかえ」と読めるようになりフレーズ合わせて『若・如・苟・縦・雖・微・使』と書けるようにします。
*現代語訳の仕方は、古文の助詞・助動詞が分かっていればある程度はできますが、また別ページを設けて説明します。
限定形
・「唯・惟・徒・特・只・直・啻」…「たダ~ノミ」
限定形をつくる副詞として7つ覚えます。『唯・惟・徒・特・只・直・啻』です。
「ただただ走って特に口ヒゲ直してい」と覚えます。
*「着の身着のまま、ただただ走って逃げだして来て、身だしなみとか色々気になることあるけど、どれか一つと言うなら特に一本だけはねてる口ひげが直したい」と言っています。
①「ただ・ただ」で「唯・惟」2つ覚えます。この2字に限らず、今回の文字は全て「たダ~ノミ」と読みます。
②「走って」で「徒」「特に」はそのまま「特」「口ひげ」は「口」に「ハ(ヒゲ)」を書き足して「只」「直し」は「直」「てい」は「帝」で、帝王の口ヒゲの話題なので下に口を付け足して「啻」となります。
③ 『唯・惟・徒』の初めの3字はそれぞれ『くちへん(口)・りっしんべん(心)・ぎょうにんべん(行い)』で「言心行」になっています。もし「言心行」が一致していればこの王様も口ひげを直せないほど全力疾走しなくてもよかったでしょう。
④ 仮定形と同じく『唯・惟・徒・特・只・直・啻』を見て「ただただ走って特に口ヒゲ直してい」と読めて「ただただ走って特に口ヒゲ直してい」と言いながら『唯・惟・徒・特・只・直・啻』が書けるようにします。
*使い方もこれらは皆同じで「たダ~ノミ」と訓じるのみ、「ただ~だけ」と訳すだけなので楽ですね。
*これらにプラスαとして副詞『独(ひとリ~ノミ)』を覚えておかないといけません。この『独』も「ただ~だけ」と訳すだけです。
・「纔」…「わづカニ~ノミ」
限定形をつくる副詞として覚える字を1つ追加です。『纔』の1字です。
「いと黒いヒヒわずかに免停」と覚えます。
*『纔』の1字ですが「書け」となると難度高いですね。書く必要ないだろうという話もありますが。一応、漢文の用字を自分のものにして「管理」するのが目的のページですので。
①「いと」は『糸』「黒いヒヒ」は『クロヒヒ』「わずかに」は『わづカニ~ノミ』という訓読で「免停」は「免」に点(テン)を入れます。最終的に『纔』になります。
②…よく見ると「免」じゃなかったりするのですが、だから注に『漢字は全て活字で挙げたものに従ってください』と書いてある訳です!
*「わづカニ~ノミ」で『やっと~だけ』と訳します。限定形の副詞は全部で9つ覚えたことになります。
・「のみ」と訓じる字…「爾・耳・而・已・矣」
限定形をつくる終尾詞として5つ覚えます。『爾・耳・而・已・矣』です。
「なんじの耳しかすでにムリや」と覚えます。
*「もうあなたの耳なしでは生きられません」という意味ですね。
①「爾」は『なんじ』と読みます。ということで損はしないので覚えます。「耳」はそのまま『みみ』として、「而」は置き字の接続詞としても登場しましたが、それ以外に『しかシテ』『しかルニ・しかレドモ・しかルヲ』などと読む場合があります。つまり『しか』です。「已」は『すでに』「矣」は今回は『ムリ矢』と読みます。
②『爾・耳・而・已・矣』が「なんじの耳しかすでにムリや」と読める様にして「なんじの耳しかすでにムリや」と言いながら『爾・耳・而・已・矣』と書けるようにします。
*使い方は、終尾詞なので一番最後に来て『のみ』と読みます。『爾・耳・已』など1字でも使えますが、2字・3字と多くなるにつれ意味が強まります。
*で、下の例を見て欲しいのですが、初めから「なんじの・耳・すでに」『しかすでに』『しかすでにムリや』『すでにムリや』『耳ムリや』…で無理すぎて最後は『耳ムリや』になっているのがなんでやねんと突っ込むところなのでしょうが、中の3つはよく見れば真ん中の『しかすでにムリや』の上2つ、下2つをそれぞれ独立させただけなので、意外と覚えやすいと分かると思います。『しかすでにムリや』だけ覚えていれば中3つは終了です。
*で、これらの訳ですが、「~だけだ」という意味以外に「~に過ぎない」「~に他ならない」などの訳があってちょっと面倒です。まとめて「杉チャンだけに他ならない」と覚えておけばよいでしょう。「杉チャン」はもちろん左側の男の子ですね。
*これらの限定の終尾詞は終尾詞のみでも用いますが、限定の副詞と合わせ技で使うということもできます。
願望形
「庶・幾・欲・冀・請・願」
願望形をつくる字として6つ覚えます。『庶・幾・欲・冀・請・願』です。
「食器干しに来たいと請い願う」と覚えます。
*世の中色んな人がいます。
①「食器」は「庶幾」です。庶民の『庶』に幾何学の『幾』あるいは機械の『機』の左側なので読めるでしょう。「食器」という漢字を覚えても意味がないので初めから「庶幾」と覚えます。
②「干し」が「欲し」です。次の「きたい」が「北異」で『冀』になります。あとは「請い願う」はそのままで『請願(せいがん)』という熟語にもなるので分かりやすいでしょう。
③ これらもやはり『庶・幾・欲・冀・請・願』が「食器干しに来たいと請い願う」と読める様にして「食器干しに来たいと請い願う」と言いながら『庶・幾・欲・冀・請・願』と書けるようにします。
*用法は『請願』の『請』が『こフ~セン(セヨ)』『願』が『ねがハクハ~セン(セヨ)』それ以外の『庶』『幾』『庶幾』また『冀』が『こひねがハクハ~セン(セヨ)』という合わせ技、あるいは『願』と同じで『ねがハクハ~セン(セヨ)』という読みになります。フレーズに「こいねがう」が入っているので分かりやすいと思います。
*『欲』だけが「~セントほっス」と下から反って読む読み方になります。
*意味は「請う」とか「願う」と言っているので『どうか~させて下さい(して下さい)』の様に『どうか』が入ってきます。これらと違い『欲』だけは『~したい(と思う)』というシンプルな訳になります。
疑問・反語
「なんゾ」と訓じる字…「胡・何・奚・庸・曷」
疑問・反語をつくる字は多くありますが、とりあえず「なんゾ」と訓じる字5つ覚えます。『胡・何・奚・庸・曷』です。
「こげつ堂積めいと大げさによう掲げる」と覚えます。
*営業マンがお客さんにちょっとしたミスをとがめられて『こげつ堂』のお菓子積まれたらこっちも許さんでもない、などと吹っかけられているところです。『大したミスでもないのに大袈裟に騒いで、ようそんなムシのいい要求掲げるわ』という意味です。
*「こげつ堂」とは、そこはググってください。
①「古月(コゲツ)」で『胡』「堂(ドウ)」は『何う?』で『何』「積めいと大げさに」は『爪糸大げさに』で『奚』です。「よう」が『庸』「掲げる」は「掲」の手偏をとって『曷』となります。(『爪糸大げさに』の『糸』は正確には上の部分だけです。また、「掲」の手偏をとると『曷』の中が『ヒ』になりますが、どちらでもOKです。)
②『胡・何・奚・庸・曷』が「こげつ堂積めいと大げさによう掲げる」と読める様にして「こげつ堂積めいと大げさによう掲げる」と言いながら『胡・何・奚・庸・曷』が書けるようにします。
*全て疑問としては「なんゾ~スル」で「どうして~するのか」という訳。反語は「なんゾ~ン(ヤ)」で「どうして~しようか、いや~しない」となるのが基本です。
*余裕のある人は『あんな悪い烏』→『安・那・悪・烏』も「なんゾ」と読める字として加えておきましょう。
感動形
「ああ」と訓じる字…「噫・嘻・悪・嗟・哉・嗚・乎」
感動形として「ああ」と読む字を7つ覚えます。『噫・嘻・悪・嗟・哉・嗚・乎』です。
「イキの悪いサカナはカラス呼ぶ、アー」と覚えます。
①「イキ」で『意・喜』「悪い」はそのまま『悪』で「サカナ」が『差(サ)・哉(かな)』「烏呼ぶ」はそのまま『烏・呼』ということにしておきます。
②最後の『アー』はカラスの鳴き声でこれらの字の読み方ですが、烏が口をあけたので『意・喜』と『差』と『烏』の左にそれぞれ『口』を付け足し代わりに『呼』の『口』は取り除きます。この辺はやっぱり動画の方が一目瞭然ですね。
*これらも覚えた順番と比べてみて下さい。『イ』『イキ』『悪い』『サ』『サカナ』に『カラス呼ぶ』で、最後の『嗟乎』以外はすべて覚えた通りの並びになっています。